1-
悪魔召喚師──デビルサマナー──
悪魔召喚プログラムという特殊なプログラムをパソコンに宿し、
悪魔を使役する者達のことを指す。
およそ現世とかけ離れた存在の『悪魔』を扱う為に、
彼らが活躍する場は常に闇世界。決して表には現れない。
生業としている者達の大多数がカムフラージュとなる表の顔をもっている。
流石探偵所───
家族で探偵業を営む彼らも、裏の顔はデビルサマナーとして裏世界で名を馳せている。
尤も、経営を担う母者の美徳に反する依頼は、金をいくら積まれようが受託はしない。
選り好みに反感を持つ者もいるが、サマナーの力の前に手を出せずにいた。
唯我独尊を征くデビルサマナー流石一家。
十月三十日、朝。
どうやら今日も、彼らに依頼がきたようである。
──( ´_ゝ`)悪魔召喚師流石のようです(´<_` )
2-
~流石探偵事務所・三階・兄者自室~
( _ゝ )「お……おぉ……」
カーテンも閉め切り電気も消された室内は、早朝というのに真っ暗だった。
そんな中で唯一光を放つ存在のパソコンに向かい、取り付かれた様に画面に食い入っている。
流石家長男、流石兄者。それが、男の名前だった。
二十代も折り返しを少し過ぎた男がパソコンに向かって何をしているのかと言うと……。
( ´_ゝ`)「よし……もう少しだ……」
徹夜明け。薄らと生えた無精髭をじょりじょりといじりながら呟いた。
兄者と共に幾多の修羅場とブラクラを乗り越えてきたノートパソコン(FMV製)は、
異常とも言える熱と音を放出していたが、最早彼にはそれがないと逆に不安のようだ。
一見するとパソコンに向かいぶつぶつと呟く危ない男だが、その通りである。
しかし彼も流石家の一員。つまりデビルサマナーなのである。
いつ壊れてもおかしくないノートパソコンは、彼の商売道具でもあった。
兄者がパソコンに没頭していると、部屋にノック音が響いた。
3-
兄者の返事を待たずして、ドアは勝手に開かれた。
(´<_` )「おはよう。兄者」
現れた男は、兄者と瓜二つの顔をした流石家次男の弟者だった。
しかし身なりはしゃんとしており、張りのある紺のスーツを見事に着こなしている。
兄者と同じ少し長めの髪も整えられ、ビフォー・アフターといった印象だ。
室内に勝手に入られた兄者は意に介さず、振り向かずに片手だけを挙げて応えた。
それはいつものことで、弟者は呆れもせず兄者の背後に近づき、
パソコンが置かれたデスクに手をつき、モニターを見つめた。
(´<_` )「また怪しいzipでも落としてるのか」
モニター中央にはダウンロード状況を示す表示があり、それがゆっくりと進行していた。
弟者の発言は今までの兄者の傾向から判断したものだ。
大概がブラクラやグロ画像なのだが、その度に弟者は兄者を慰めなければいけないので、
弟者はやれやれと溜息をついた。
( ´_ゝ`)「フフフ……違う! 違うぞ弟者!」
嬉々とした表情のまま、弟者の発言を全力で否定した。
そう。兄者がダウンロードしている物は、その辺りに転がっているzipなどではなかった。
4-
おわり